BAD & BAD【Ⅰ】
“あの日”より、NINAとしてこの町に棲んでいた時より、トラウマの元凶となるあの時より、
私は確実に強くなった。
恐怖なんかに、負けない。
負けたくない。
独りでだって、立ち上がれる。
私は真っ黒な傘を置き去りにして、ゆらりゆらりと廃校をあとにした。
まだ戦慄は治まらない。
神雷のたまり場近くで、傘もささずにキョロキョロ辺りを見渡している、朔と真修がいた。
「あ!幸珀!」
「やっと見つけた……!」
駆け寄ってくる2人に、安堵する。
探してくれてたんだ。
瞬間、ようやく戦慄しなくなった。
「ったく、いきなりどっか行きやがって。びしょ濡れじゃねぇか」
「2人もね」
「はいタオル、これで拭いて」
「ありがと」
真修に渡されたタオルを、頭の上に置いた。