Light ! *
 






やだ、どうしよう。誰か……






そろそろ涙が溢れそうになったとき、後ろの2人のうちの1人がわたしの肩に腕を回してきた。








「ひゃっ……! やめて……」


「ひゃっ! だって、かーわいい!
 ヤバいコトされたくなかったら大人しく着いてきてね〜」








嫌だという気持ちが涙になって出てきて、
もう声も出ない。






もうわたしはきっとこのまま連れていかれてしまう。






一瞬晃佑の顔が思い浮かんだけど、今は朝練中だ。
こんなところにいる訳がない。


いたとしてもこんな人混みで気付くわけない。




周りを通り過ぎていく人達だって、気付いているのかいないのか
何も気にせず歩いていってしまっている。






涙でもう前も見えなくなったその時、わたしの肩に回っていた腕がふっと外れた。




時間差で「ぐわっ」といううめき声をあげてその人が崩れ落ちる。




すると、わたしの腕を引っ張っていた奴も気付いたようで後ろを振り返る。








「……おい、どうした?」







わたしの腕を掴んだままで崩れ落ちた人のそばに走り寄る。




その隙に、と思って一生懸命腕を引っ張ったけど力が強い。強すぎる。






……もうダメだ、逃げられない。




そう思った。




その時。








「事情を話す前に。そいつの腕、離してもらえませんか?」








まさか、と自分の目を疑った。






わたし、夢でも見てるのかな。
いやむしろこんなの悪い夢な方が良い、けど。






……目線の先、倒れ込んでいる奴のそばには晃佑が立っていた。






 
< 16 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop