Light ! *
やだ、どうしよう。誰か……
そろそろ涙が溢れそうになったとき、後ろの2人のうちの1人がわたしの肩に腕を回してきた。
「ひゃっ……! やめて……」
「ひゃっ! だって、かーわいい!
ヤバいコトされたくなかったら大人しく着いてきてね〜」
嫌だという気持ちが涙になって出てきて、
もう声も出ない。
もうわたしはきっとこのまま連れていかれてしまう。
一瞬晃佑の顔が思い浮かんだけど、今は朝練中だ。
こんなところにいる訳がない。
いたとしてもこんな人混みで気付くわけない。
周りを通り過ぎていく人達だって、気付いているのかいないのか
何も気にせず歩いていってしまっている。
涙でもう前も見えなくなったその時、わたしの肩に回っていた腕がふっと外れた。
時間差で「ぐわっ」といううめき声をあげてその人が崩れ落ちる。
すると、わたしの腕を引っ張っていた奴も気付いたようで後ろを振り返る。
「……おい、どうした?」
わたしの腕を掴んだままで崩れ落ちた人のそばに走り寄る。
その隙に、と思って一生懸命腕を引っ張ったけど力が強い。強すぎる。
……もうダメだ、逃げられない。
そう思った。
その時。
「事情を話す前に。そいつの腕、離してもらえませんか?」
まさか、と自分の目を疑った。
わたし、夢でも見てるのかな。
いやむしろこんなの悪い夢な方が良い、けど。
……目線の先、倒れ込んでいる奴のそばには晃佑が立っていた。