Light ! *
いつもより低いトーンで挑戦的に笑っているその人は、どこからどうみても晃佑だった。
「は? 誰だよてめえ!」
「あいにく、名乗るほどの有名人じゃないんです。それよりその腕……」
「は? ……っざけんな! ナメてんのかよ!」
もうわたしの腕からは手が外れて、代わりにその手は晃佑の右頬を殴った。
バシッという凄まじい音がする。
駅を歩く人達がとうとうざわめき始めた。
駅員さんが気付いてこちらの様子を伺い始めている。
みるみるうちに腫れていく晃佑の頬。
走って晃佑の所へ行こうとすると、今度は唯一わたしに何もしなかった男がわたしの腕を掴む。
はなして、と思いっきり引っ張るけど本当に力が強くて振りほどけない。
その代わりにもっと力を込められた。
思わず「痛っ」と言ってしまう。
「!? なんで吹っ飛ばねぇの? 俺のパンチなのに!」
「…………、何ででしょう?」
「なんなんだよお前は!! さっきから煽りやがって!」
もう1度、今度は違う奴が晃佑を殴りにかかる。
しかしその手は晃佑の手の中へと見事に収まった。
驚いたように晃佑の方を見る男達。
晃佑はそれをひと睨みすると、真っ直ぐに見つめて口を開いた。
「おれのこと殴るなら殴ればいいじゃないですか。……ただし」
ニヤリと口の端を吊り上げて笑う。
「おれのひかりに、手を出さないでくださいよ」
その瞬間に、涙が頬を伝った。