Light ! *
晃佑はわたしの頭の上に置いていた手を外して
なにやらカバンの中をごそごそと探している。
「今日な、電車から降りたら馬鹿みたいに寒気がしたんだ。
それで温かいものでも飲もうかなって思って。
……自販機でコーンスープ、買ったんだよ」
もう冷めちゃったけどな、と言って
まだ開けていないコーンスープをわたしに差し出す。
わたしはプルタブを開けるとひとくちだけ飲んだ。
「そしたらもう1本当たってさ。
寝坊したけどツイてるな、とか喜んでたらひかりの姿が見えたわけ。
声かけようと思ったら、なんか野郎共がひかりを囲んで誘拐しようとしてたから思わず……
……思わず、体が動いちゃって?」
持ってたもう1本のジュース投げちゃったんだよな、と苦笑いする晃佑。
確かに倒れていた男の側に
なんでかホットミルクティーの缶が落ちていた。
……本当に馬鹿だ。もう。
少しコントロールを間違えたら他の関係ない人に当たってしまうかもしれないのに、
寸分の狂いもなく狙っている的に当ててしまったんだから。
「本当は何発か殴り返したかったんだけどな。
それやると野球部が問題になっちゃうからさ。」
「もう、…………十分……だよ」
「え?」
「……馬鹿、ありがとう、晃佑……」
やっとのことで出てきたのはかすれ声だった。
晃佑の方を見ると、改めてお礼を言われて照れているのか俯いていて表情が良く読み取れない。
ただ、行くぞとだけ言って
わたしの手を取って急に歩き出す。
……今日はもう、遅刻決定だ。