Light ! *
ただし、マネージャーになるまでには
色々な試験があるらしい。
大変な仕事ばかりだから、根性のある子を選び抜くみたいだ。
わたしも、もちろん野球は好き。
小1ぐらいの時から甲子園はずーっと見ていたし、
幼なじみも野球をしていたから、応援しているうちに野球が好きになってしまった。
きっと好きな度合いで比べたら負けることはないと思う。
でも、マネージャーになるつもりはないし
陰ながら応援出来ればいいかなぐらいに思っている。
そんなことを考えつつ教室のドアに手をかけると、
急にわたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、ひかり!」
「どうしたの? ……ていうか練習じゃなかったっけ?」
「……練習終わったからいるんだよ。
ところでお前昨日の宿題終わってる?」
こいつが例のわたしの幼なじみ。
中川晃佑( ナカガワ コウスケ )という。
同じ高校に入学したけどクラスは別だった。
でも、入学してからまだ2週間ぐらいなのに
どうやらファンクラブが出来てしまっている。
なんか女の子に呼び出しをしょっちゅう食らうらしくて
本人はすごく迷惑がっているけど。
……モテるってすごいなあ。
……ていうか、なんでわざわざ違うクラスのわたしのところに宿題を聞きに来るんだろう。
晃佑のファンに聞いたら1発で見せてくれると思うのに。
「おれ昨日疲れて寝ちゃってやってないんだよね〜」
「はいはい。
近くに見せてくれる女の子いっぱいいるんじゃないの?」
「……そいつらが嫌だからわざわざここまで……」
晃佑が苦い顔をした瞬間、"あっ!"という声とともに女子数人が晃佑の元へ駆け寄って来る。
ゲ、という声もつかの間、あっという間にわたしまで囲まれてしまった。
「中川くん! お弁当作ってきたんだ! 食べて!」
「わたしのも!!」
「良かったら一緒に教室まで行こう?」
晃佑は苦い顔なりにニコニコしながら
なんとかやり過ごしていた。
目線でこちらに何かを訴えているけど、知ーらない。
あ、いいことを思いついてしまった。
ちょっと頼み事ぐらい、ファンの子だし良いよね。
「ねえねえ! もしよかったらそこの中川くんに昨日の宿題、見せてあげてくれないかな?」
「「「喜んで!!!」」」
その子達は目を輝かせて晃佑の方を見ると、
あっという間にクラスまで引っ張って行ってしまった。
あの険しい顔を見る限り、多分わたしは後で愚痴を聞くハメになるんだろう。