好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
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この命というものは、本来はいらないもので。
だから、生きて来られたの。
トクトク……静かな音……波の音? 樹を渡る風? ……何だかとても、大きな自然のような音が耳に届く。
真紅は朝、目が覚めるように瞼をあげた。
「ん、起きたか?」
誰かがいた。真上から声がする。
その後ろに銀の月を背負っている。光が、翼のように散漫している。
「……てんし……?」
「あ? 何寝惚けてんだ。俺がそんなもんに見えるか?」
見えるよ。
とっても綺麗ね、あなたは……。
「悪いけど。俺は鬼だ」