好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
そう言って薄く開いた口元から零れる――鋭利な、牙。あ―――
「おに?」
「そ。ほら」
言って、青年が真紅の首筋に触れた。
どくりと鼓動の音。そこには確かにある、二つの傷跡――牙の跡。
ちをすわれた。
「あ……っ!」
背中に走る痛み。何? 何があった?
「動くな。お前、死ぬレベルの出血してたんだ。――って」
「………」
急に起こした身体は支えられなく、倒れこんだところに腕があった。
「言うこと聞けよ」
呆れ気味に言われ、真紅は悔しさに顔を歪めた。