好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
紅亜と紅緒は、本家の双児だった。
小路は、本家筋の人間の中でも、兄弟が多くあれば、最も力の強い者が後継者となってきた。
妹の紅緒が跡継ぎとなり、紅亜は桜木の家に養子に出された。
紅亜に陰陽師としての力がないだけなら、妹が跡継ぎとなっても、小路の今までを考えれば特に問題はない。
だが、紅亜にはそれだけではない理由があった。
黒藤の知る、白桜にも教えていない理由がある。
「黒。中へ入れ。冷えるだろう」
「ん? いいのか? ……敷地に入った途端矢が飛んでくるとか……」
「ねえよ」
白桜は呆れ気味に答えるが、黒藤の心配もあながち間違いではない。