好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
白桜の祖父であり御門の先代・白里(しろさと)は、ある理由から黒藤が孫に近づくのを嫌がっていた。
白里は隠居して京都の本邸に移ったのだが、首都にある御門の別邸には、白桜のほかにも同居人が何人かいる。
そのうち数人は、白里が白桜の補佐にとつけた一族の者だ。
彼らにとって当主は白桜だが、主人は白里なのだ。
「お前が来ることはみんなにも話してある。短く終わる話でもねえだろ」
黒藤が今夜、御門別邸を訪れることは、涙雨(るう)という名の黒藤の式があらかじめ教えてくれていた。
先触れ(さきぶれ)というやつだ。