好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「……別に私、鬼なんて呼んでない」
取りあえず逃げることは無理なようだ。
だったら、別にこの自称鬼は真紅を助けてくれたようなので――殴って逃げたりはしないでいいみたいだ。
「んー。腹空かしてたらいい匂いがしてな。来てみたらお前がいた。名前は?」
「……お腹空かして……で、私の血……? え、鬼って、何、吸血鬼、とかなの?」
信じる気はないが、あの一瞬は死ぬのだとわかった命が生きている。これのおかげなのだろう。
「半分はな。俺は混血。でも、お前に当たって正解。ほんと、かぐわしいくらいの香りがする」
言って、吸血鬼は真紅の長い黒髪の先を掬い取った。
その動作がまた美麗で……。
夜闇を切り取ったような髪に、月の光を浴びて銀色に輝く瞳――本当に、ただの人間ではなさそうだ。
「え、私におうの?」
そこ、ショックだった。女子高生。