好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


「外でするのも難な話だろ。無炎(むえん)。無月(むつき)も呼び出して黒の見張りにでもついていてくれるか? それならいいだろ?」


「ま、とーぜん控えているけどな」
 

すっと姿を現したのは、紅い髪に着流しの青年だった。


面差しはどこか、黒藤に似ている。


「無月。お前はこいつの首に縄でもつけておけよ」
 

呼ばれ、顕現したのは無炎と呼ばれた青年と全く同じ顔で、髪の色だけが違う男性だった。


こちらは、着物というよりは祭祀を司る官吏が着るような衣をまとっていて、黒藤と同じ黒髪だ。


そして無炎とは違って感情の見えない表情と眼差しで黒藤に言う。


「黒藤。御門の家に入るお前は、白桜の幼馴染ではない。あくまで小路の後継者という立場、忘れるな」


「う~……白は可愛いのに~」


「それ家ん中で言うんじゃねえぞ」

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