好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
泣き言を言い始めた黒藤に白桜が厳しく言い、後ろ襟首を無月が摑んで歩く。
天音と無炎は、白桜の使役(しえき)――式で、無月と涙雨、そして縁(ゆかり)という三基が黒藤の式だった。
黒藤の式は、主への態度が色々と非道い気がする白桜だが、黒藤の言動にも多分に問題がありすぎなので構う気はない。
「白桜―。……来たわね小路」
植木の小路を抜けた母家の玄関口で待っていたのは水旧百合緋(みなもと ゆりひ)という名で、御門が預かっている少女だった。
白桜と同い年で、お互い物心ついた頃にはすでにここにいた。
「百合姫(ゆりひめ)。もう休んでいな」
白桜が言うが、百合緋はその幼い面(おもて)に険を露わにする。