好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
当然、天音、無炎、そして黒藤の式でありながら見張り役の無月も同席する。
仕事の話と聞いて、百合緋はこの場に入ることは辞したが、居間で起きているのだろう。
いつもなら百合緋の護衛に天音をつけるのだが、天音も無炎も、白桜と黒藤を二人きりにすることの方を厭(いと)うので、白桜が別邸に呼んだ家人の一人に一緒にいてもらっている。
「んでさ、お前は真紅嬢に逢ってどうするつもりだ?」
白桜と黒藤は、窓を開けた縁側で話す。
十五夜も過ぎた頃合いだが、白桜は屋敷に結界を張っているので、その中では大して寒さは感じない。
先ほど黒藤が大声を出しても、結界に閉ざされるので近所迷惑にはならない。
月は欠け始めている。