好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「八割は」
「残りの二割は?」
「母上が目覚める前に喰われる。そんだけ、小路の始祖は妖異の間では評判だ」
「……俺も小路の始祖には逢ったことがないからな……」
小路には、十二人の始祖がいる。
本家と分家を含め、『小路十二家(こうじじゅうにけ)』と呼ばれる。
黒藤と紅緒は本家筋の人間だが、どの家に始祖の転生があるかは、陰陽師の先見(さきみ)でもわからない――始祖の転生だけは、範囲外なのだ。
十六年前、紅緒は姉の腹に宿った姪の存在を知った。
そして、母体を通してもわかるほどの霊力を持ち始めている胎児。
そこで初めて、小路は始祖の転生が生まれようとしていることにも気づいた。