好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「? なんでそんなこと?」
疑問符を浮かべた真紅に、黎は「ないならいい」と言って立ち上がった。
「彼氏役ぐらいならやってやる。ただ――
「ほんとっ⁉」
「……そこまで驚かんでも」
「いや、だってもう逢わないとか言われてたから――また逢っても、突き放されるかな、って……」
あ、だめだ。こえが震えた。
涙が浮かんでしまいそうな目元を隠すように、顔を俯けた。
その視界の上で、真紅の方に伸びて来た手は、寸前で退かれた。
「……その前に、一度その男友達、逢わせろ」