好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
不安になってきた。
と言うか、今更ながら現実感がわいてきた。
今まではふわふわ夢の中のような気持ちだったから、吸血鬼だのファンタジー話を流しながら聞いていたが、家まで当てられると……。
「んなわけあるか。お前とは今日が初対面だ」
「だよね。……じゃあ、ほんとににおうの?」
「うん。すっげーいいにおい」
「……それは血のにおい?」
「真紅のにおいだよ」
「……どんなにおい?」
ここまでにおいの話をされると気になってしまう。
一応、おなごだし。
黎が階段をあがっていく。
「月のにおい」