好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


「……つき?」


「桜色の月のにおい、だな。春の、夜桜が舞ってる中ってーのかな。すきなにおい」


「………」
 

天性のタラシだ。
 

恥ずかしげもなくこんなことを言う奴が現存するのか。


いや、過去にいた保証もないけれど。


あぶないあぶない。いくら助けられた身と言えど、気をつけなくちゃ。
 

でも。


「……ありがと」
 

すきだと言われて悪い気はしない。真紅は桜も月もすきだ。
 

桜は日本なのだと。


「桜木……?」

< 20 / 447 >

この作品をシェア

pagetop