好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「……つき?」
「桜色の月のにおい、だな。春の、夜桜が舞ってる中ってーのかな。すきなにおい」
「………」
天性のタラシだ。
恥ずかしげもなくこんなことを言う奴が現存するのか。
いや、過去にいた保証もないけれど。
あぶないあぶない。いくら助けられた身と言えど、気をつけなくちゃ。
でも。
「……ありがと」
すきだと言われて悪い気はしない。真紅は桜も月もすきだ。
桜は日本なのだと。
「桜木……?」