好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


「私の苗字だけど?」
 

アパルトマンの一室。


そう名の書かれた部屋の前で黎は足を停めた。真紅の部屋だった。
 

しかし本当にどんなにおいがしているのだろうか。


抽象的な言い方だったから、はっきりとはわからなかった。


「親いないって言ってたけど、ここで降ろすか?」


「警察を呼ぶべき事態になる?」


「ならねーよ」
 

言い、黎はドアを開けた。


「真紅、歩けるか?」


「歩く」
 

黎の腕から降りて、靴を脱ごうとしたときに


「……ぁれ」
 

ふらりとまたよろめいた。


「……座れ」

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