好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
6 残滓
「あれは妖異の残滓(ざんし)だな」
廊下から病室の中を窺ったという白桜の話に、真紅は首をかしげた。
海雨のもとを訪れた真紅は現在、白桜と架と、病院から帰る途中だった。
「ざんし?」
「うん。今、梨実海雨に妖異が取り憑いているわけではない」
「ほんとっ? じゃあ――」
「話は最後まで聞くものだ、真紅」
勢い込んだ真紅を、白桜は言葉一つで制する。
真紅は顎を引いた。