好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
(……人間(ひと)のさだめの、なんと憐(あわ)れなことか)
長い年月を生きる妖異が、主と共に生きるのはほんの瞬(またた)きほど。
何人もの主を持ったものもいる。一人にさえ使えない妖異もある。
黒藤は、涙雨が初めて主とした人間だ。
涙雨は時空の妖異。その翼で駆け抜ける。
黒藤のもとにいる、今は羽休めの時間だ。
ほんの瞬き、人に寄ってみようと思ったのだ。
そして黒藤はそう思わせるだけの存在だった。
黒藤の式に下って、涙雨は面白い毎日しかない。
権威と権力をぶっ飛ばして突き進む主様。
その先には惚れた女子(おなご)がただ一人。