好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
真紅と紅亜が女性の前まで行くと、女性は膝に手を置いて大きく頭を下げて来た。
それから顔をあげて微笑んだ。あ、瞳の色が紫色――
「お初に御目文字(おめもじ)仕(つか)まつります。紅亜様と真紅お嬢様でいらっしゃいますね。黒藤が式の一、縁(ゆかり)といいます」
式だった。……青春謳歌中の学生かと思った。
「初めまして、桜木真紅です。……えーと、縁さんのことはママも見えてるの?」
隣を見ると、母は肯いた。不思議そうな顔をしている。
「あたし、一応黒藤の姉ってことでご近所さんには話してあるんです。
黒藤の一人暮らしって言いながら周りに式がいるのも、周りに説明が難しいかなってことで。
ですから、いつも顕現(けんげん)して人の姿を取っています。姉弟二人暮らしってことになってます」