好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
微笑む縁を見て、真紅は頭の中で唸った。
昨日――今朝か?――逢った白桜の式である天音は現代には添わない出で立ちだったからすぐに式――人間ではないと納得できたが、縁はモデルさんくらいやっていそうな女子大生にしか見えないので認識が困る。
「どうぞ中へ。黒藤が待ってます」
縁に先導されて、まだ認識が困っている真紅と紅亜は小さ目の日本家屋に入った。
庵(いおり)、というやつだろうか。
一人で暮らすには問題なさそうな広さだ。
「黒藤。お二人がいらしたわよ」
玄関から縁が呼びかけると、着流し姿の黒藤が顔を見せた。
「ああ。紅亜様、真紅、わざわざすみません」