好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


「いいえ。黒ちゃんに逢えるの久しぶりだから嬉しいわ」
 

母は甥っ子に向けて破顔する。


「そう言っていただけるとありがたいです。こちらこそ、旦那様と別れられたあとに何も出来ずに申し訳ありませんでした」


「いいわよ、そんなの。その頃にはもうお父様もお母様も亡くなっていたし、紅緒も眠っていたのだから、私が本家と顔見知りになってるって知ってる人いなかったでしょうから」


「ですが、俺は憶えているべきでした。――どうぞ。今日お呼びしたのは、見ていただきたいものがあるからなんです」
 

悔恨の顔をする黒藤。


確かに、黒藤は真紅より一歳年上だというから、紅緒が眠るまでの一年は母とも逢っていたようだ。


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