好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「紅緒様……」
真紅がびくびくしていると――逢った途端に彼氏を投げるような人にすぐに心を開けと言うのが無理な話だ――、紅緒は真紅たちとはベッドを挟んだ反対側に立った。
着物の裾を揃えて立つ姿は、こんな心境でも美麗に見える。
「初めまして、梨実海雨さん。真紅の叔母の、影小路紅緒といいます」
「は、はじめましてっ、真紅にはいつもお世話になってますっ。……紅亜お母さんによく似てますね……って、紅亜お母さんがドッキリ仕掛けてるわけじゃないよね?」
あまりに似た面差しに戸惑った海雨が、真紅と紅緒を交互に見比べている。
「紅亜姉様とは双児なんです。海雨さん――」
ふと、紅緒は着物であるのも気にせずベッドに膝をついて身を乗り出し、海雨の顎に手をかけた。
「く、紅緒様っ? どうしたんですかっ?」
「うん――。これからも、真紅と仲良くしてやってくださいね」
「も、勿論ですっ。くれおさんも、よろしくお願いしますっ」