好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
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「黒藤。あの娘、気をつけなさい」
病院の中庭に出た紅緒は、息子にそう告げた。
白桜は残党狩りをしている天音と無炎のもとへ、先に向かっている。
「梨実海雨の方ですか?」
「そうです。お前たちは真紅にあの娘の浄化を任せたのでしょうが、あの娘にあるのは妖異の残滓だけではない。……黒藤はわかっていて知らぬふりをしているでしょう?」
「……さあ」
誤魔化した黒藤に、紅緒は厳しい眼差しを向ける。
それから、と黒藤が話す。
「母上、当主に戻られませんか? 現当主よりは、母上の方が統率も出来ましょう」
息子の提案にも、母はふいっとそっぽを向いた。