好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「母上が眠りにつかれた理由も、俺は総て納得しています。
俺が母上の立場であっても、同じことをしていました。
小路を継がないのは意趣返しとか嫌がらせとかでなくて、ただ単に、俺が生きたいのは白がいるところだというだけです」
紅緒は当然、白桜が本当は女性であると知っている。紅緒は目を細めた。
「お前は見た目だけでなく、旦那様に似ましたね。わたくしに似なくて本当によかった」
「突拍子がないところは母上譲りだと言われたばかりですが」
苦笑する息子に、紅緒は難しい顔をする。「黒藤、」と
「……無理に母と呼ばなくてもいいですよ。わたくしは、お前に母らしいことなんて一つもしてやれていない……。姉様のようには……」
瞼を伏せる母に、黒藤は一つ瞬いた。