好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「ちゃんと暇もらってきた。そしたら架までついてきてなー」
「主家の大事だ。出奔(しゅっぽん)した兄貴にばかり任せるわけにはいかない」
真面目な顔で言うのは、架だった。
架には、転校することは伝えてある。飲み下しきれない顔をされたが、それだけだった。
「黎くん、架くん、ありがとうね」
一緒にいるのは母だけだ。
紅緒は、これから住む家の方で準備をしているそう。
家具なんかは持って行く必要ななさそうなので、本当に身の回りのもの、着替えやら学校のものだけだいいようだ。
「いいえ。こちらが勝手にやりたいだけです。お邪魔でなければいいのですが」
「そんなことないわよ。ほんと……真紅ちゃんのために、ありがとうね」
紅亜は、穏やかに話しかける。
真紅は母の思いがありがたい一方、この双児の妹はあれだからなあ……という複雑な心境だ。