好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
2 十字架
泣いていた。
やわらかな熱が離れていくのが淋しくて。
あたたかな瞳が閉ざされるのが淋しくて。
その熱で手を握って。
その瞳に私を映して。
それだけが、今の気持ち。今の真紅の全部。
全部全部、真紅は黎だけになっていた。
朝は当たり前のように来た。夜が続くことを願ったのは初めてだ。
遮光カーテンの向こうに見えた朝焼けの色に、絶望の光もあるのだと教えられた。
離れることを嫌だと思った人と出逢ったのは、夜だった。
逢いたい。逢いたい。
でも、あの人が私に架けた願い。人間として、生きる。それも叶えたい。