好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
暗い林道に倒れ伏した少女。
背中を斬りつけられ、血が流れ出ている。
喋ることも、瞬くことも出来ないほど意識に霞がかかっている。
――月を背にした彼が現れるまでは。
「……ほしい……の…?」
あれ、音が出る。
「そー。マズい血、飲まされてるから。あんたからいいにおいするし。美味そうだし」
そう言って、青年は少女の脇に膝をつき、首元に触れた。
「なあ、いい?」
「……いい、よ……わたし、しなせて……くれるなら………」
「ちゃんと送るよ。一度きりの餌にはしねえ。じゃあ――」
頭に手を添えて、少しだけ持ち上げた。
「いただきます」
牙――が、首に突き刺さった。