もう一度、名前を呼んで2
進級
あたしたちは,無事に全員そろって3年生へ進級した。
龍毅と舜くんはちょっと怪しかったりもしたけど…まあ結果良ければってやつだよね!
新しいクラスでは悠唏とだけ同じで,僚と龍毅と舜くんが隣のクラスだ。あっちゃんが担任してるのは,あたしのクラス。
今年もあっちゃんが担任かあ,やりやすくっていいなあ
「2年の年度末のテストの成績返すからな,呼ばれたら取りに来いよ!」
そう言うとあっちゃんは出席番号順に名前を呼びだした。
2年生が終わるとき「3年のクラス編成に使うかもしれないし使わないかもしれない」という名目でテストがあったのだ。あたしは真面目に解いたけど,他のみんなはどうだったんだろう。僚は真面目にやってそうだけど後の3人はなあ…悠唏は読めないけどなんとなくめんどくさがって真面目にやってなさそう。やればできるはずなのにな。
「悠唏~取りにこい。寝てんじゃねえ!」
学生はみんな一歩引いて接する悠唏にもあっちゃんは変わらない。っていうかむしろフランクだ。やっぱりチームの後輩っていうのは大きいのかな。まあ小さいころからの知り合いだっていうのもあるけど!あたしにも優しいしね。
「お前な~真面目にやれよな,ちゃんとやりゃあもうちっといい点とれんだろ?」
「めんどくせえ」
「おめーがやってくれりゃあ鳳狼のやつらもちゃんとやんじゃねえか?」
「僚に言ってくれ」
あっちゃんの手から結果の用紙を受け取ると,どうでもよさそうにクシャっと握って机に戻った。
…最近ちょっと機嫌悪いな,悠唏…。
あたしの方が後ろの席に座っているから悠唏の後姿をじっと眺めていた。
「次~藍那ちゃん…え?マジ?ナニコレ?」
「はーい,何?」
「え,藍那ちゃんって勉強できんの?」
「失礼だな~まあまあできるよ」
まあまあっていうのは冗談かもしれない。
ていうかあっちゃんはあたしが何で留学してたのか知らないんだっけ?
「数学満点じゃん…」
「得意だもん」
「へえ」
数学しかできない。コクゴは苦手だ。話すのは問題ないけど読み書きがあんまり…
「啓司にも報告すっから放課後理事長室来てくれる?」
「わかった」
もらった結果用紙には,12位の文字があった。学内で12位かな…数学満点は1位だろうに,コクゴがやっぱり足を引っ張ったみたいだった。でも92点は大健闘したんだからね!あ,英語も満点です。
昼休み。いつもの音楽室でみんなとご飯を食べた。話題はやっぱりテストのことだ。学生だからね!
「みんなテスト返ってきたでしょ?どうだったの?」
理流がきいてきた。理流は一つ年上なのに、わざわざけいちゃんに許可もらって留年したらしい。成績もいい方だし、就職だってすぐ決まりそうなのに…
理由は聞いてないけど何かあるんだろうと思う。
「テストなんざ知らねえ」
「結果も見てねー」
龍毅と舜くんは二人して知らんぷりだ。まあそうだろうと思ったけどね。そりゃ二人は楽しくない話題だろうね。
「ねえ,藍那ちゃんめちゃくちゃ成績いいって聞いたんだけどそうなの?」
「あたし?」
「そっちのクラスのやつが言ってたよ。数学満点らしいって」
「え,そうなの?すげえじゃん!」
「あー,うん。数学は得意なんだよね」
視線を感じてそっちを見ると,悠唏と目が合った。悠唏は事情…っていうかいろいろ知ってるもんなあ。
「満点とかマジかよ,頭やべーな」
「龍毅が言うと良くない意味に聞こえるね」
「あんだと?」
理流と龍毅のやり取りを聞いて笑っていたら,僚から「おめでとう」と言ってもらえた。ありがとう。
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