もう一度、名前を呼んで2


side 悠唏


「やばいよ…全然気づいてなかった」

藍那を玄関先まで送り,僚と理流と俺は3人になった。最近はローテーションで倉庫に幹部が二人泊まるようにしているため,龍毅と舜はそっちだ。

それに今日は小さな傘下も集めて集会を開くことにしている。これから倉庫に戻るのだ。


「どうした?」

そういえば僚はしばらく喋りもせずにパソコンと向かい合っていた。


「最近街の様子がおかしいから何人かに調べさせていたんだ…そしたら,」

困ったような,泣きそうな顔にも見える。いったいなんだよ…


「変な薬が出回ってる。うちのやつは誰も引っかかってないけど,傘下を名乗ってた十何人かのやつらが病院で治療受けてるって…警察にも届いてるけど,薬を回してる証拠が出てこないから大規模なガサ入れもできないらしい」

「薬って…」

「最初の中毒性は弱いけど,めちゃめちゃハイになるって言ってるみたい。バーとかクラブだけじゃないみたいだね…それに軽く記憶が飛ぶみたいで,回してきた人物をしっかり覚えてるやつがいないらしい…」


なんだ,それ

全然ここまで情報来てなかったじゃねえか


「小さな集団の小競り合いも頻発してる。だれか,引っ掻き回してるやつらがいるんじゃないかな」

「ほかにもあるか?」

「レイプ事件も6件…2カ月で6件起きたのは,俺たちがこの辺りを制圧してからは初めてだよ。その前はあったけど…見回りの目を盗んでこんなことになってたなんて…」


治安維持にも尽力していた僚はかなりのショックを受けている。俺だってショックだ。

最近ぜんぜん街を歩いてなかったしな…


「とにかく,一般人にも被害が出てる以上速く何とかしないと。原因は多分…」

「倉本か」

「倉本の姿を見たやつはいないらしいけど,病院は出てるはず。半身不随気味だって情報もあるけど信ぴょう性は薄いね」

「そうか…」


とにかく俺たちは,集会でそのことを周知させるべく倉庫に戻った。

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