もう一度、名前を呼んで2
「あーハイハイ,お熱いのは分かったからとりあえずこっちに戻ってきてくれる?」
「そーだぞ,全員の治療終わったらいったん倉庫だからな」
あたしが落ち着くと悠唏は離してくれた。ああやっぱり痛々しい…せっかくのイケメンに傷がついちゃったね…
「他のみんなは大丈夫なの?」
「悠唏みたいな大怪我はないよ。ありがとう」
僚は全然元気そうだ。確か最後に乗り込んで後処理メインで担当とか言ってたから,そんなに殴り合いとかには参加してないのかな。
ふと舜くんを見ると拳がつぶれて血が出たような跡が見えた。何か塗ってあるみたいだから治療はしたんだろう。あ,手袋外した龍毅も同じだ…
みんな特攻服で長袖だから分からないけど,実は腕とかおなか周りには痣ができてたりするんだろうか…
心配だなあ。
「もうすぐ治療も終わるみたい。倉庫に戻るのは泊まり組と幹部だけにしようかな。全体の集会は紫蛇のやつらの処遇が分かってからのほうがいいかもしれない」
「ま,全員明日には集まるだろうけどな」
「今日のところは解散にするか」
連絡がきたらしい僚の言葉で,そういうことになった。あたしは幹部について行っていいのかな。
「藍那ちゃんは悠唏と一緒に車で戻っておいで。下のやつも何人か乗るだろうけど,いいかな」
「全然いいよ!乗りきらないならバイクでもいいけど…」
「胸でかくしてきたら乗せてやるよ」
「龍毅の後ろにぜっっったいもう乗らない!!」
また!!そんなこと言って!!絶対許さないからね!?
てかなんで龍毅にそんなこと言われなきゃいけないの!!
「…何の話だ?」
「龍毅がね!さっき後ろに乗ったら全然胸無いって!」
「ブハッ」
「舜くん!?」
「い,いや,わりい……」
舜くんにも笑われた!酷い!
「…藍那,気にすんな」
「気にしてないもん!!!!」
悠唏まで!!憐れんだ目で見ないで!気にしてないのに!!
ムキーーーッと怒った気持ちのまま,車で倉庫へ行った。
龍毅なんか短小包茎だったらいいのに!
そう考えて,アレに限ってそんなことはないんだろうな…と切ない気持ちになった。なんも勝てない。
車で一緒に移動した人は足をやられたらしく,松葉杖をついてた。
「大丈夫なの?」
「折れてはないんス。ただちょっと曲がんなくて…」
ハハハ,と笑ってたけどこの人が一番酷い怪我かもしれない。悠唏も申し訳なさそうに労わっていた。
「早く治るといいね」
「バイク乗りたいっすからね」
少しでも早くみんなの怪我が治りますように。
そう願わずにはいられなかった。