もう一度、名前を呼んで2


「悠唏,めちゃくちゃ面倒くさそうな顔してるとこ悪いけど,もう一個面倒なことがあるからね」

「あ?」


なんだよ?


「桜華に顔出し」

「あ……」



そうだった…。あの,去年ひと悶着があった桜華に顔出しに行かなければ。

あんな所とやりあう気はサラサラない。

桜華だってこっちが仕掛けなければ行動は起こさない穏健派だし,こっちだってそうだ。

だからそれを示しに行かなければ。

なんなら同盟組んでもいい。傘下には下る気はないがそんなことは言い出さないだろう。



俺らみたいな暴走族の管轄地域ではない場所を挟んで,ついにあの桜華と隣り合わせになったことをじわじわと実感していた。



「行くとしたら幹部だけだろうな」

「そんなもんか」

「何人かあっちに行くことになるかもしれないから誰か連れて行ってもいいけど」


鳳狼は今までに同盟を組んだことがない。

何代か前ならあるのかもしれないが,今はない。取り込んだのか分裂したのか…そのあたりの歴史が明確になっていないのは歴代の総長が面倒くさがりばっかりだったからだろう。俺も例にもれず。




「桜華も最近代替わりしたって話聞いたし,近いうちに行こうか。アポとっとく」

「頼んだ」



代替わりしたってことはあの冷龍はもういねえのか……

それにあのやたら雰囲気のある美人な姫様もいないのだろうと思う。


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