もう一度、名前を呼んで2






紫蛇壊滅から約1カ月。今日は桜華の“城”と呼ばれる基地に行くことになっている。

藍那を連れていくかは悩んだが,一緒に行くことにした。

もし去年に関わったやつがいるなら藍那も見ておきたいと言ったからだ。


「マジで一人で変な行動すんなよ?」

「分かったってば!」

「桜華相手だと助け出せる自信ねえからな」

「そんな弱気なこと言わないでよ」


弱気にもなるっつーの

今の代はどうだか知らねえが,売られた喧嘩を買うだけで全国ナンバー1の称号を手に入れたチームだぞ。それに鳳狼より全然歴史は浅いし…先代たちが面白半分で桜華に喧嘩を売りに行ったりしなくてよかった。

冷龍がやりあっている現場を一度だけ見たことがあるが,何の感情もない目でひたすらに相手を千切っては投げ千切っては投げしていたシーンは今でも忘れない。

そのしなやかな動きから龍と呼ばれていたが,鬼っつっても良かっただろうと思う。




「あの綺麗な人いるのかなあ」

「さあな」

「総長は変わったんだって?」

「ああ。だから姫さんもいねえかもな」

「そっか…」



そんなことを話しながらたどり着いた先にいたのは,あの時問題の引き金になったオレンジ頭の男だった。












「…お前が,今の総長なのか?」

「ああ」



気まずい。あの時俺たちが一方的にとらえた男だ。その周囲のやつらは知らねえが,そいつはなかなか敵意のある目を向けてきた。


「…今日はやりあいに来たわけでもねえし,宣戦布告に来たわけでもない」

「そうみたいッスね」

「挨拶だ」

「仲良くしましょうって?」


クソ,やりづれえ




「……まあ,こっちだって悪い気はしねえッス。先代がいなくたって覇気もなくなってたところっスからやり合おうなんてこれっぽっちも思ってないっスよ」

「鳳狼からは同盟を提案する」

「…そっちが困ったら桜華が助けに行くってことッスか」

「俺たちだって,行動するさ」



それが同盟だろ。




「…桜華は同盟も傘下も持たないチームっス。それを変える気はねえ。こっちからは不干渉条約を提案するっス」


不干渉?なんだと?


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