もう一度、名前を呼んで2
*藍那*
数時間だけ、猶予をもらった。
外の時間はわからないけれど「夜が明ける頃に返事を聞こう」といって男は出て行った。
いまは夜中か…と思いながら1人で考えていた。あれからどれくらい経ったのだろう。2時間…いや3時間くらいか。あたしの返事は決まった。
悠唏たちはきっとあたしを探しているだろう。一晩中、もしかしたら、寝ずに。
申し訳ない気持ちでいっぱいになり、胸が締め付けられる。
悠唏はいつもあたしのことを大事にしてくれる。
僚や理流は優しく話を聞いてくれるし龍毅と舜くんは一緒になってバカやって遊んでくれる。
他にも幹部じゃないみんなも毎日あたしを笑わせてくれて、日本に帰ってきてからの生活がこんなに充実してたのは紛れもなくみんなのおかげだ。
…そういえば、最近ジュリアがよくテレビに出ていた。
誰かを探している、日本に行く、と言っていたな…もしかしなくても、あたしのことだろう。
エドが生きていてどこかの組織に依頼してまであたしを探したんだ。きっとみんながあたしのことを探している。
……あたしは、あそこに戻っていいのだろうか。またエドを危険な目に合わせるんじゃないだろうか。エドだけじゃない。他のみんなを、命の危険に晒すかもしれない。
日本にいてもその危険はあるけれど、平和な日本よりはあちらの方が死に隣り合わせな気がした。
誰かが死ぬのは,怖い。
「…時間だ」
気配など何もなく、またふらりと男が現れた。
「返事を聞こう」
「あたしは…アメリカへは行かない」
行かない、それがあたしの返事だ。
いますぐにでもエドに会いたいけれど軽々しくそれを口にすることはできない。
ヘラリと笑ってみんなの前に顔を出すことなんか、できない。
だったらジュリアやエドが来るまで待とう。
この返事を聞いてあたしのことを見放すのならそれでもいい。
そのほうが、良いかもしれない。万が一本当に迎えに来てくれるならそれほど嬉しいことはない。
その時は心の底から謝って付いて行こう。