もう一度、名前を呼んで2
翌朝。
「で?」
藍那を正座させて問い詰めた。さっき起きたばっかりだが事情を聞くのが先だ。
「…怒ってるよね」
「まあな」
正座できない!といっていた割にはできてる…とか見当違いなことを考えてしまったが,俺は怒ってんだよ。
「なにしてたんだよ?」
「…」
言えねえってか。
「なんかに巻き込まれたのか?」
「そういうのじゃない」
「誘拐でもねえって?」
「うん」
「……じゃあなんだよ」
「……」
いったい何なんだ。
「…危ねえことに巻き込まれてんじゃねえのか」
「ううん。何もないよ…」
そんだけ凹んでるくせに何もないって?誰がそんなもん信じるんだよ…
「……話す気はさらさら無いってことだな」
「ごめん」
問い詰めても,きっと言わないんだろう。俺が,頼りねえからか?
俺がもっとこいつをちゃんと見てれば頼ってくれんのか?留学するって言ったコイツを引き留めてずっと一緒にいれば違ったのか?……考えてもしかたねえけど。
「……頼りなくて悪かったな。もう,家でゆっくり休めよ」
椅子から立ち上がり,正座している藍那の腕をつかんで部屋から出した。
ウチの勝手は知ってるだろうし,窓から家に帰る様子だって見える。
…とりあえず,一人になりてえ。
「…悠唏,頼りないなんて。思ってないよ。話せなくてごめんね」
ドアの向こうから聞こえたが,返事はしなかった。
なんかちょっと,疲れた。