もう一度、名前を呼んで2
*エド*
くそ…揃いもそろって言いたいこと言いやがって!
先日のジュリアと言い,昨日のエリクといい,言いたい放題だ。
「取って代わる?」あいつが俺に?エリクは俺の影武者だ。チームにいるときは個人として存在しているが,世間にはいない。そんなあいつが,俺にとって代わるだと?
そんなこと,許すはずがねえ。
どうしようもないイライラを枕にぶつけた。
ハッと気づいてピローシーツの裏を見る。そこには名前が入っていた。
どうしても夜眠れないときがあるアイナのために贈ったもの。お揃いがいいというので自分のものまで作ってしまった。
今はもうあいつの記録がここにしかない。
…どうして俺から逃げたんだ。
何の感情かもわからない。
悔しいのか,悲しいのか,寂しいのか…
ただ,このベッドでは今の俺には広すぎることは分かっていた。
“エドを失うのが怖かったんじゃないか”
そんなことを言われても,俺の家業を考えてみろ。一生付きまとう恐怖じゃねえか。
いつ死ぬかわからない。どんな形で死ぬかもわからない。形が残ればいいが,バラバラになってすべて売りさばかれて頭だけが悪趣味にたらい回しにされる可能性だってある。
そんな環境で生きていくのにあいつを巻き込めるだろうか。
天使のように純真無垢で真っ白なあいつを。
今以上に苦しめて怖い思いをさせるかもしれないのに。
「…んなこと…できるか」
アイナを失うのはもちろん怖い。嫌われたくない。拒絶だってされたくない。
これからアイナを探して見つけて追いかけて連れてくることはできるだろう。迎えに行ったら泣いて喜んでくれる気もする。
だが,一緒になった後だ。
…これ以上のショックを与えるくらいなら,今のうちに離れていた方が良いのではないか。
「どうしろっていうんだよ…」
アイナじゃなければこんなに悩まなかった。
自分の望むまま人形のように手元においておけた。
それなのに。
「他人の幸せなんか,ガラじゃねえ…」
俺といたら,アイナは不幸になる。