もう一度、名前を呼んで2
*ジュリア*
ずっとずっと、サボっていた仕事に復帰した。
幼い頃からやっていたモデルの仕事は、エドやアイナや他のメンバーと楽しくやっているうちにどんどん億劫になって、知らないふりばかりしていた。だけど、この名前と顔を最大限に使ってやる。ジュリアはそう決心しマネージャーに連絡を取った。
「ジュリア、復帰のきっかけは!?」
バシバシ光るカメラのライトの前で、真っ赤な唇がきれいな弧を描いた。
「いつまでも応援してくれるファンに恩返しをしなきゃと思って」
そんなのは建前だ。どれだけファンレターをもらっても最近まで読んでいなかった。それらの中にはモデルを辞めようとしているジュリアに対する暴言が書かれたものも含まれていたから、そんなのは見たくなかったのだ。だが、復帰を決めた時に全て読んで受け止めた。
…あの子を取り戻すためなら、なんだってしてやる
ジュリアの覚悟は重い。
毎日のトレーニングと、撮影と、インタビュー。それから、精力的な営業活動とテレビ出演、なんでもこなした。寝る時間なんて、移動の間くらいしかない。それでも、あのエドに最後に会った時から、ジュリアは1人でもやってやる、と強く思っていた。
エドがあんなに腑抜けだなんて思っていなかった!アイナを取り戻すためならあいつもなんだってすると思っていたのに。なにをあんなに弱気になっているのかしら。アイナが私たちを捨てるわけがないのに。絶対に何か事情があるに違いないのに!
楽しかった頃の写真を見ては、決意を新たにする。どんなに疲れて寝不足で、今にも倒れそうだとしてもジュリアは笑った。
今のわたしが、アイナの目に止まりますように。わたしのメッセージがアイナに伝わりますように。絶対に、逃がさない。
執着とも言えそうなそれは、ジュリアの心の支えだった。
アイナを連れ戻すため、という口実がなければ、今にもエドのように弱々しく落ち込んでしまいそうだったのだ。