もう一度、名前を呼んで2
*藍那*
「海……?」
急に水着を着てこいとだけ言われた次の日。
みんなでやってきたのは海だった。
「なんで海?」
「気分転換だ!俺様の案だぞ」
龍毅は早々に浮輪を膨らませて脇に抱えている。
気分転換…
もしかして最近あたしがふさぎ込んでるのを心配してくれた?
……優しいなあ
最近はもうじりじりと日差しが照り付けるようになっていて,雨の季節が終わるのも時間の問題だろう。
今日も暑い。
浜辺はまだ人もまばらで,そりゃあまだ夏休みにも入ってないんだから少ないはずだ。
…海,久しぶりだなあ
キラキラと水面に反射する光に目を細めた。
「1泊できるんだぜ~」
龍毅が先導してくれる。泊まるの?マジで?女一人なんだけどなあ…。
今更のような気もしたけど,海でみんなで1泊っていうのはなんだか心臓がザワザワした。
「まあ,泊りだから全員では来られなかったけど楽しもうね,藍那ちゃん」
「うん」
僚ももう下は海パンみたいだ。ウキウキしてるのが目に見えて伝わってきてなんだか面白い。
やっぱ僚でも海でテンション上がるんだねえ
「…なんか失礼なこと考えてない?」
「えっ!なんでもないよ!?」
なんでバレた!?
「…今日はすごくわかりやすいね」
くすくすと笑われてしまった。ううう…
「おーい,とりあえずバーベキューの準備すんぞ~」
1人ですたこらとコテージに行ってしまった龍毅が呼んでいる。
「待ってーー!!」
ちょっとはみんなのこと待ってよね!
「藍那,肉も食えよ」
「理流~あたしマシュマロ食べたい」
「えっもうデザートいくの」
「マシュマロ食べたい」
飯も食えよと文句を言いながらもマシュマロの袋を取ってくれた。
へへへ,バーベキューといえばマシュマロでしょ。
割りばしにプスッとさして火が弱いところで焼き始めた。
「テメェコラ昂太!俺の肉!」
「さっさと食べへんやつが悪いんです~もう飲み込みました~」
「むっかつく!殺すぞ!」
「うへ~こわ!!」
「あっ,舜テメエも横取りすんな!」
「うるせえな,けちけちすんなよ」
龍毅の周りでは熾烈なバトルが繰り広げられている。
一緒に来てくれた昂太と舜くんがお肉を横からとっていくらしい。
昂太が煽って,そのすきに舜くんが食べる…ううん,見事な連携プレー。
昂太の横でニコニコしながら座ってるモモもしれっとマイペースにお肉を食べてるのが見えた。
「焼肉は戦争やっていつも言うてるやろ!」
「うるせえ!!俺にも肉食わせろ!!」
「お前焼けるの待ちすぎなんじゃね?」
「俺はよく焼き派なんだよ!関係ねえだろ!」
龍毅がブチ切れてる。ほんと面白いなアイツ…