もう一度、名前を呼んで2
あれから数日後。
悠唏があからさまに周囲を警戒するようになったこともあってかあの人は姿を見せなくなった。
やっぱりあたしか悠唏に関係があったのかな…
危険なことになる前に気づいてよかった。
「悠唏,藍那ちゃん,この間のこと少し調べてみたんだ」
倉庫でいつものようにテレビを見ていると,僚が話しかけてきた。
この間,周囲を警戒するようにって話は幹部のみんなとしたから理流たちも僚の言葉を聞いてテーブルに集まってきた。
「二人の家の周辺にこの二日間人を配置してみたけど,怪しい人物は捕まらなかった。藍那ちゃんが見たやつは姿を隠したんだと思う。」
「そっか…関係ないって可能性もあるね」
「その線もなくはないけど,急に姿を見せなくなったわけだから関係ないことはないと思う」
だからこれからも気をつけなきゃだめだよ,と念を押された。
「それから,この1年間何度か藍那ちゃんを調べた形跡を発見した。仕掛けてたトラップには引っかかってなかったから気付かなかったけど,いろんな国からのアクセスがあったみたい。何か心当たりがある?」
「いろんな国…?」
「…アメリカだけじゃねえってことか」
「そうだね。回線をいじって調べてたのかもしれないけど,そこまでは分からない。けど核心的な情報まではたどり着けなかったんじゃないかな。住所とか学校とか…ネットで探ることはできないようにしてるよ」
そうだったんだ…
もしかして,リンやティルがあたしを探したりしたんだろうか。
あの二人なら念を重ねて回線をごまかしていたりしそうだ。逆探知されたら困るだろうし。
「ここ半年では形跡が激減してるから,諦めたのか何らかの方法で知りたい情報を手に入れたのかもしれない。だから最近人影がチラついたりしたのかなって思ってる。とにかくやっぱり警戒することだね。情報関係の攪乱は既に手は打ってるから,その辺は任せてほしい」
「そうだな…」
「つーかそろそろ藍那も護身術くらいは身につけるべきじゃねえの?」
それまで黙って話を聞いていた龍毅がそんなことを言い出した。
「もちろん悠唏がほとんど一緒にいるし俺らも警戒してっから必要ないかもしんねえけどよ」
「うーん…どうかな…」
「藍那はどうしたい?」
理流が真面目な顔をして聞いてきた。あたしは…
「…動けたほうがみんなが安心なら,それでもいいよ」
だけど前線に立つことはできない。自分の身を守るくらいならできるけど…前線に立つようになったら,嫌でもみんなが怪我しているのを目の当たりにしなきゃならない。それは…苦手だ。
「…つーか,護身術くらいならできんじゃねえか?」
「悠唏?そうなの?」
悠唏にじっと見つめられ,そういえば…と去年のことを思い出した。