もう一度、名前を呼んで2



去年。悠唏が倉本をひたすら殴っていた時。

あの時あたしは,悠唏を止めるためにその手を受け止めた。

力いっぱい殴っていた拳を受け止めたことで「護身術くらいなら」と悠唏は言っているんだろう。


本当は護身術よりは喧嘩のほうができるけど…でも,やりたくない。

あたしがみんなを守ろうとすると逆に傷つけてしまう…


「…油断しなければ,自分の身は守れると思う。たぶん…」


しばらく体を動かしていないからちゃんと動けるかは分からないけどね。



「下でやってみるか?」



喧嘩しろとは言わないから,護身できるかくらいは確認しておけってことだった。

そうだね。ちょっと動いておいた方がいいかもしれない。








「全員おりてくるの…?」

「なんでだよ。わりーのか」

「…見なくてもいいじゃん」


適当にコウタとかと遊んだらいいんじゃないの?

そんでコウタから報告したらいいじゃん…


「おもしろそーだから見るよ」



え?舜くん?面白そうだって?


「そうだな。藍那がどんなもんなのかは知っときたい」


理流まで…ううう,あんまり知られたくなんかないのになあ…





「何がベース?合気道?空手?」


僚が何やら楽しそうに聞いてくる。聞くと,それぞれちょっとかじってるメンバーがいるらしい。えええ…何がベースかなんてわかんない。あっちで適当に教えてもらった動きだし…

変なことを言うのはやめておこう。空手と合気道をやってたのは本当だし。



「とりあえず空手かなあ」

「なんでもいいよ…」



ぜんっぜん気分が乗らない。

みんなに見られるのやだなあ…





「じゃ,藍那ちゃんを捕まえて組み伏せようとしてみて。藍那ちゃんはそれに対処するだけでいいよ」



対処って具体的にどうしたらいいんだろう。鎮めるの?逃げるの?それとも逆に組み伏せる?


よくわからないまま,理流が指名したメンバーと対峙した。




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