もう一度、名前を呼んで2
さてそろそろお開きにしようか,という雰囲気が流れてきた。
理流と話してからはもうずいぶん経っていて,バカ騒ぎの真ん中にいる昂太と龍毅をみながらちびちびお酒を飲んでみた。
「藍那ちゃん顔に出ねーなあ」
「そう?」
「酒強い女はいいよなあ!」
その言葉に,ふっと昔の記憶がよみがえった。
『お前に酒はまだ早い』
『でもまあ,慣れるのも必要かもな』
『お前意外と飲めるんだな,ニホンジンのくせに』
『酒強い女は好きだな』
『潰れるのは,俺の前だけにしてくれよ』
うん……つぶれたりしないよ……
「……藍那ちゃん?」
「あ,……なんでもない。お酒強いのは遺伝かな~」
「そうか!ま,飲みすぎんなよ!」
あはは,と笑えば「俺はそろそろ片づけに回るわ!」とここを離れていった。
まさかこんなところで思い出すなんて。
思い出さないように,してたのになあ…酔ってるのかな……
「藍那」
「ん?」
あ,悠唏だ。
「つかれた」
「お疲れ様。意外と飲んでたね」
「見てたのか」
「まあ」
最初こそ隣で焼きそばと唐揚げを頬張ってた悠唏だけど,途中でみんなの輪の中に入っていった。あたしも理流と話したりしてたし。
「……楽しかったか?」
「うん」
「理流とは何話してたんだ?」
「理流と?ん~……」
何なら言っていいのかな。理流の家のことはダメなんだっけ…
「悠唏は,意外と素直な人間だなって話とか?」
「はあ?」
あたしの言葉を聞いた悠唏は怪訝な顔をした。ふふ,何その顔,なんか可愛い
「んだそれ」
「とっつきにくそうに見えて,結構優しいしみんなと仲良しだよね」
「……」
「……あたしが来てから,少し変わったんだって?」
「理流が言ってたのか」
「うん」
「…じゃあそうかもな」
自分ではわかんねえよ,と小さく呟いた。
みるみるうちに片付いていく様子を見ていた。あんな格好して暴走族なんかやってるけど,みんなとっても常識人だよね。こんな宴会やってても喧嘩なんか始まらないし,明日バイクで帰ることを見越してこの時間に撤収が始まってるんだろう。本当,見かけによらないなあ…
「なあ……」
「ん?」
悠唏に話しかけられてそっちを見る。悠唏は全然手伝わないな。まあ総長だしいいのかな。
「……なんでもない」
「なにそれ」
「いい」
話しかけたくせに。何か言いたげにしてるくせに。なによ。
意地でも聞こうかと思ったけど,すっと立ってあっちに行ってしまった。
一体何だったんだろう?