もう一度、名前を呼んで2
再会

旅行からしばらく経った。相変わらず街は沈静化したままで、今のところ新しい勢力が出てきたりとかはないみたいだ。桜華との不干渉条約とやらのおかげもあるのかもしれない。

「喧嘩がねえっていうのは楽だけど暇だな」
「龍毅は血気盛んだねえ~献血でも行ってくればいいんじゃない?」
「馬鹿にしてんな?」
「はははは」

こんな軽口も日常茶飯事だ。僚も気をもむことがなくなったからか自然に笑っている。悠唏は相変わらず寝てばかりだし、舜くんはどちらかというと龍毅派で、暇でしょうがないらしい。理流は何やら趣味ができたらしくボトルシップ?というものに凝っている。

「……理流、そんなの好きなんだね」
「細かい作業は結構好きだぞ」

ピンセットでパーツをつまんで瓶の中に船を作っていくらしい。あたしには絶対無理だ。すごい。
特に何をするでもないけど、いつもこの倉庫の幹部室に集まって各々好きなことをしているんだから、みんな結構仲がいい。あたしが出会う前よりもずっと前から一緒にいるんだもんね…そりゃあそうか。

あたしはといえば録画しているテレビ番組をみたり、昂太たちとバイクに乗せてもらってツーリングしたり、学校では真面目に教科書を読んでみたりしている。勉強は全然面白くない。教科書を覚えれば満点が取れるような試験は嫌いだ。意味が分かんない。けどそれに意味があるんだなんていう人もいるんだから世の中は不思議なもんだ。けいちゃん達は「勉強なんかできても意味ねえと思ってたけど学校から出ちまうとそうもいかねえ」と諭してきたりした。うるさいなあ…と思いつつ黙っておいた。

あたしの家は変わらずママたちは帰ってこなくて、お手伝いさんがいないときはあたしは一人きり。こんな広いところに一人では居たくなくて、必然的に悠唏たちと過ごす時間が一日の大半を占める。

刺激のない生活は龍毅の言うようにつまらない。けれど、誰かが傷ついて悲しい思いをするくらいならこれでいい。これのほうがいい。


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