クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
私だって恐くて仕方無いのだ。
こんな所には一時も居たくない。帰りたいと、泣き喚きたい気持ちだ。
だけどそんな事をしても助からないし、こんな時こそ冷静でいなくてはならないと、理性で恐怖を抑えている、それなのに。
情けなく泣き言を言うヘルマンを見ていると、苛立ちが湧いて来る。
私は声を抑えながらも厳しく言った。
「ねえ、泣くより無事に戻る方法を少しは考えて。助けが間に合わない場合の事も想定しなくてはいけないのよ? 今は私たちふたりしか居ないの。知恵を出し合って、なんとか助かる方法を考えないと!」
ヘルマンは驚いたように目を瞬かせる。
「で、でもここから逃げるなんて無理ですよ、俺を連れて来た奴は凄い力でとても抵抗出来ない」
ここに来る間、私より酷い事をされたのだろうか。ヘルマンはガタガタと震えて言う。
「確かに強そうな男だったわ。だけどあなたはアンテス領の名門、ベルツ家の次期当主でしょう? しっかりして!」
「次期当主……だけど……」
ヘルマンはまだ動揺から抜け出せないようだ。
こんな絶望的な状況だから、仕方が無いのかもしれないけど。
でも……リュシオンだったら、どんな時だって震えて泣くなんてしないだろう。
もしここに居たら、きっと私を安心させようと微笑んでくれたと思う。守ってくれたと思う。
リュシオンに会いたい。
直ぐ不安になってしまうし、リュシオンに一番に想って貰える自信は無いけれど、それでも側にいたい、側にいて欲しい。
絶対にリュシオンのもとに帰りたい。
「……グレーテ様、大丈夫ですか?」
黙り込んだ私に、ヘルマンが遠慮がちに声をかけて来る。
「大丈夫……でも、絶対に無事に帰るわよ。私は諦めないわ。あなたも諦めないで」
ヘルマンの目を真っ直ぐみて言う。
「私たち以外にサウル王子の本性を知っている人はいないの。このままだとあなたの家族も危険なのよ。何としても戻って皆に伝えないと」
「家族……カサンドラも?」
「そう。あなたの妹を守る為に諦めないで、気をしっかり持つのよ。いい?」
小心者のヘルマンにも、譲れない大切なものがあるようだ。
彼は涙を止め、今までにないしっかりとした表情で頷いた。
こんな所には一時も居たくない。帰りたいと、泣き喚きたい気持ちだ。
だけどそんな事をしても助からないし、こんな時こそ冷静でいなくてはならないと、理性で恐怖を抑えている、それなのに。
情けなく泣き言を言うヘルマンを見ていると、苛立ちが湧いて来る。
私は声を抑えながらも厳しく言った。
「ねえ、泣くより無事に戻る方法を少しは考えて。助けが間に合わない場合の事も想定しなくてはいけないのよ? 今は私たちふたりしか居ないの。知恵を出し合って、なんとか助かる方法を考えないと!」
ヘルマンは驚いたように目を瞬かせる。
「で、でもここから逃げるなんて無理ですよ、俺を連れて来た奴は凄い力でとても抵抗出来ない」
ここに来る間、私より酷い事をされたのだろうか。ヘルマンはガタガタと震えて言う。
「確かに強そうな男だったわ。だけどあなたはアンテス領の名門、ベルツ家の次期当主でしょう? しっかりして!」
「次期当主……だけど……」
ヘルマンはまだ動揺から抜け出せないようだ。
こんな絶望的な状況だから、仕方が無いのかもしれないけど。
でも……リュシオンだったら、どんな時だって震えて泣くなんてしないだろう。
もしここに居たら、きっと私を安心させようと微笑んでくれたと思う。守ってくれたと思う。
リュシオンに会いたい。
直ぐ不安になってしまうし、リュシオンに一番に想って貰える自信は無いけれど、それでも側にいたい、側にいて欲しい。
絶対にリュシオンのもとに帰りたい。
「……グレーテ様、大丈夫ですか?」
黙り込んだ私に、ヘルマンが遠慮がちに声をかけて来る。
「大丈夫……でも、絶対に無事に帰るわよ。私は諦めないわ。あなたも諦めないで」
ヘルマンの目を真っ直ぐみて言う。
「私たち以外にサウル王子の本性を知っている人はいないの。このままだとあなたの家族も危険なのよ。何としても戻って皆に伝えないと」
「家族……カサンドラも?」
「そう。あなたの妹を守る為に諦めないで、気をしっかり持つのよ。いい?」
小心者のヘルマンにも、譲れない大切なものがあるようだ。
彼は涙を止め、今までにないしっかりとした表情で頷いた。