クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「え? え……リュシオン!」

 ドレスのスカートが捲り上げられ、左足首にリュシオンの手が触れて来る。
 靴はとっくに脱げてどこかに行ってしまっていてるから、むき出しの状態で……。

「ちょっと待って!」

 なんとかリュシオンの手を振り払おうとして身動きしたけれど、リュシオンの手は外れない。片手でそっと掴んでいるだけなのに。

「グレーテ、暴れないでください。怪我が酷くなるし、スカートが乱れてしまいますよ」
「え?」

 言われてみればスカートが膝より上に捲くれあがりそうになっていた。

 顔を赤くして慌てる私を他所に、リュシオンは真剣な目で私の足の状態をを確認している。
 丁寧な口調なのに行動は強引。これは絶対手当てする気で譲らなそうだ。

 リュシオンがこうなってしまったら仕方無い。
 私は諦めてされるがままになることにした。
 だけど、リュシオンの大きな手の中に収まっている自分の汚れた足を見ると、気分が沈む。

 素足を見せるのは初めてなのに、こんな汚れ……。

 緊急事態にそんなことを言っている場合じゃないのは分かっているけれど、ショックな気持は失くせない。

「かなり腫れている。この様子では骨が折れているかもしれない……動かないように固定します」

 リュシオンは手馴れた様子で私の足に包帯を巻いて行く。
 結構しっかり巻かれているようで、固定が終ると動かなくなったせいか痛みが減った。

「凄い、痛くなくなったわ、ありがとうリュシオン」

 感動する私にリュシオンが釘を刺すように言う。
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