クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「ホリー……大丈夫なの?」

 呼びかけるとホリーは血の気の引いた顔を向けて来た。

「こ、この人が急に飛んで来て」

 ホリーは震える手で倒れた騎士を指差す。

 飛んで来たってどう言う事? 私がそう問うよりも前に、リュシオンの厳しい声が響いた。

「フレッド! 侍女殿の手助けを」

 リュシオンの声に反応して直ぐに若い騎士が駆け寄って来て、座り込んだままのホリーが立ち上がるのに手を貸した。

 彼はよくリュシオンの近くに居るから見覚えがある。ホリーも同じだったようで、躊躇いなく手を差し出して引っ張り起して貰っていた。

 私はと言うと、リュシオンに手を引かれ見学席へと連れていかれるところだった。

 リュシオンがこんなに強引な態度をとるのは初めてだ。

 私は戸惑い、前を歩くリュシオンの背中を見つめて問いかける。

「リュシオン……怒っているの?」

 今日のリュシオンは初めから機嫌が悪かったように思う。私が更に追い討ちをかけるような、気に障る何かをしてしまったのだろうか。

 いつも穏やかな人が怒ると恐い。

 不安のまま返事を待っていると、答えより先に見学席に到着した。

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