クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
 こんな時に急ぎの話?……いったい何の話だろう。
 カサンドラは、責めるようなキツイ声を上げる。

「なぜ、あなたがグレーテ様を連れているの?」

 事情が分からず戸惑う私とは対照的に、リュシオンはカサンドラから責められるのが分かっていたかのようだ。
 慌てることなく真っ直ぐカサンドラを見つめ返している。

「リュシオン、なぜ?」

 黙ったままのリュシオンに、カサンドラが問う。

「あの日、私に一生償うと言ったことを忘れたの? あなたは誰の為の騎士なの?」

 カサンドラの声はそれ程大きくはなかったけれど、強い怒りが篭っているのをひしひしと感じさせるものだった。

 だけど私には、カサンドラがここまでリュシオンに対して怒りを向ける気持が分からない。

 今、ベルツ家はとても厳しい状況にあるけれど、それはリュシオンのせいじゃない。

 カランドラがこの状況で怒りをぶつけるのだとしたら、その相手は兄のヘルマンか、従兄弟のサウル王子のはず。
 

 それなのに、なぜここまでリュシオンを責めるのだろう。


「……リュシオン、どういうこと?」

 平行線の状況に耐えかねて、私は小声でリュシオンに問うた。

 リュシオンはどこか辛そうな目で私を見下ろすと、カサンドラに言った。

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