クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「も、申し訳ありません。リュシオンの格好から護衛中とは思わなかったもので……」

 ヘルマンはうろたえながら言い終えると、リュシオンを指差した。

「お前がそんな格好をしているから! 任務中だなんて思わないだろ?」

 この人は何でもリュシオンのせいにしたいらしい。私は内心溜息を吐いてから、リュシオンに小声で言った。

「きりが無いから行きましょう」

 リュシオンは頷くと、嫌味なヘルマンにも丁寧に頭を下げてから背中を向けた。

 ちらりとヘルマンの様子を窺えば、不満そうな顔をしながらも今度は呼び止める事は無かったので、私達は無事にその場を立去った。




 少し歩いた先でホリーとフレッドと合流した。

「あの人、なんだったんですか?」

 ふたりはヘルマンとのやり取りを見ていたらしい。ホリーが開口一番にそう言った。

「リュシオンの知り合いだそうよ」
「リュシオン様の?……そうなんですか」

 ホリーもヘルマンの態度が気に入らなかったようだけど、リュシオンの知り合いと聞いておおっぴらに文句を言えなくなったようだ。消化不良といった表情をしながらも大人しく口を噤む。

 リュシオンはフレッドとホリーに、簡単にヘルマンの事を説明し、それが終ると私がお願いしていた若い女性向けの店に連れて行ってくれた。
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