クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
 アトレゼで一番人気なのはやはり【マダム・ベルタ】のサロンで、アンテス近隣の貴族令嬢達がこぞってオーダーをする事で有名だ。
 その分高価だからオーダーできる人間は限られているのだけれど。

 リュシオンの案内してくれた店は女性向けのドレスと装飾品等を扱う店で、マダム・ベルタの店に比べると手頃な価格帯の店だそうだ。

 私も普段使い出来そうな物がセンスよく並んでいる。

「うわー素敵なお店ですね」

 ホリーも気に気にいったようで、夢中になって、あれこれ物色している。

 私もいろいろ見てみようと思い、視線を巡らした。
 目を惹いたのは赤いリボン。今私が付けているものより細くて、色味も赤にしては柔らかな、身に付けやすそうなものだった。

 スルッとした手触りで、高級感もある。

 これなら直ぐに使えそうだ。装飾品は赤を増やそうと思っていたし、今日のお土産にこれを買うのもいいかもしれない。

 早速良いものを見つけて喜んでいると、頭上から声がした。

「グレーテ」
「えっ、リュシオン?」

 いつの間にかリュシオンが直ぐ近くに居て、私の手元を見つめていた。
 てっきり入り口で待っているかと思ったから驚いた。

「そのリボンが気に入ったのですか?」
「そうなの。可愛いと思って……リュシオンはどう思う?」

 リュシオンはリボンになんて興味は無いだろうと思いながら、リボンを髪に近づける。

 するとリュシオンは微笑しながら手を伸ばして来て、私の手からリボンをそっと取った。
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