クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「現ベルツ家当主の姉君がシハレフの王弟に見初められ嫁いでいるのです。その関係でベルツ家の滞在となるのでしょう」
「シハレフ王には跡継ぎが居ないから後継者は王の甥にあたる方だと聞いているわ。ではベルツ家は次期シハレフ王の外戚になるのね。でも王弟妃殿下がベルツ家の令嬢だったとは知らなかったわ」

 一応近隣の王家の家系図はざっとだけど勉強しているのだけれど。

「小さいとは言っても王家だからな。他国の末端貴族の娘を妻には出来なかったんだろう。ベルツの娘は嫁ぐ前にシハレフの高位貴族の養女になったんだよ」

 今度はお兄様が言った。

「身分の問題で養女になるのはよくある話かもしれませんが、なぜアンテス家、またはベルハイムの有力貴族の養女にならなかったんですか?」

 他国の貴族では後ろ盾として頼り無いのではないだろうか。

「まあ、当時いろいろ有ったんだろ」

 私の疑問をお兄様はあっさり流した。
 性格的にそういった些細な事は気にならないのだろう。脱線した話を強引に戻す。

「とにかくそう言う理由でベルツ家に行く必要がある。約束してしまったからな」
「それで私を代わりに……でもそれならエステルお義姉様の方が適任では?」

 次期辺境伯夫人の義姉の元の身分はベルハイム王家の姫。相手に敬意を払うのなら身分高い者が行った方が良いと思う。
 だけどお兄様は私の提案を検討する事もなく拒否した。

「あいつは駄目だ」
「なぜですか?」
「だって心配だろう?」
「……心配するような何かが有る場所へ、妹は平気で行かせる訳ですね」

 冷ややかに言うと、お兄様は慌てたように弁解して来た。
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